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オッペンハイマーのnumahdのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

一番心配していたのは、史実モノでありがちな終わり方。画面が暗転して音楽が鳴り、実際の人物の写真が映って、「19XX年、〇〇は△△に移り住み晩年を過ごした。彼の最後の言葉は⬜︎⬜︎だったと言う」みたいなテキストが入る演出。これ自体は別に良いんだけどノーラン作品には合わないだろうなーと思っていたのでそうなっていなくてよかった。
原爆の描写に関してもあれで良かったと思う。それは明確な理由があって、「加害者」「被害者」という観点で考えると「加害者」である側が描く映画では原爆の被害の描写はどうしたってその持つ意味が変わってしまう。罪の意識を描く作品ではあるものの、あくまでもオッペンハイマーという科学者の個人的な苦悩に焦点を当てているため、被害の描写を強烈にしてしまうと、端的に言ってショックが釣り合わなくなってしまうと思う。もちろんこれは「この映画として」の話で、アメリカや世界の人に核兵器の恐ろしさや現実の被害を伝える事は大事だとは思うが、その役目はこの映画には持たせられないし、持ち得ないのだと。
あと印象的なのは、光(量子)に関する表現。光は粒子の性質も波の性質も持つ訳だが、空間に漂う粒子のカットや、水面の波紋のカットでこれを表現するノーランはピュアだなーと思う。ちょっと学生の実験映画的な匂いもするような、「青臭い」とも言える事をやっちゃうあたり。本当にピュア。
そして強烈な「光」は「影」も作る。光と色のあるオッペンハイマーの視点でのパートと、影であるストローズの視点での白黒パートで分ける演出。思いついたノーランはさぞ喜んだだろう(想像)
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