Blue

オッペンハイマーのBlueのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

オッペンハイマーは昨年のうちに友人が一足早くBlu-rayを買っていて、アメリカ版には日本語字幕がなくて内容がさっぱりわからないからという事で譲り受けました。
英語がわかるとはいえ、かなり専門用語も飛び交うし、字幕を見ながら鑑賞しましたが1回目はほとんど理解できなかった、というのが実際でした。
妻と話しながら2回目でようやく理解できた、という感じで、今回札幌のシネマフロンティアで3回目の鑑賞となりました。あらためてIMAXでの鑑賞は情報量が違うと共に音がとても重要なので、Blu-rayなど待たずに映画館での見る事をオススメします。

ポスターそのものが全てを語っていると思いました。ポスターではオッペンハイマーの背後に鉄塔の部分が写っているけど、よく見ると背中から蜘蛛の巣のように広がりをみせている。これは原爆を作った事によって闇の部分の広がりをみせているような気がします。
同時にオッペンハイマーが牢屋、あるいは時空の檻の中に閉じ込められているかのようにも見える。
ノーランの時系列をいじってわかりにくくしてるのは、オッペンハイマーを決して英雄視させないためもあるけど、時系列をいじる事によってオッペンハイマーを時の檻から出さずに罰を与えているかのような印象を受けました。

そしてオッペンハイマーの眼差しは真っ正面を見てこちらを見ている。
もし俺や人々がオッペンハイマーのように原爆を作れる頭脳を、技術があったとするならば踏み止まれる勇気があるか?こちらの心をのぞいているかのように見えます。

俺自身は昔からプラモデルを作るのが趣味だったし、バイクやパソコンを分解してどのような仕組みで動いているかみるのが好きでした。映画やドラマも見始めた途端に色々と考察してしまう。
そのようにして考察ばかりしてストーリーを楽しんでいない気がするし、バイクせよパソコンにせよ使って楽しむものを、そこにはあまり興味がない自分が今でもそんなに好きではありません。
そんな自分が19歳の時に物理を勉強してる友人に核分裂の話を詳しく聞いた時、脳が熱くなるような興奮をしつつ、しばらく熱病にかかったかのように考えていたのを憶えています。
俺自身の中にも巨大なオッペンハイマーがいるし、今まで取り入れてきた知恵の実の中にも、確かに毒はあった。

広島の原爆資料館に行った時にどれだけ自分が覚悟もなく足を踏みいれたか、思い知らされました。今でもそこで買った写真集はめくる事はなくても自分の中での巨大な欲望の抑止力として、本棚に置いてあります。

重力に星はもちこたえる事ができずにブラックホールになるという説を唱えたオッペンハイマー。
監督のクリストファーノーランは、その罪によってブラックホールにオッペンハイマーを閉じ込める様な構造で映画制作をしようと思ったのかなと感じたし、またその仕組みを理解して先走ってしまう欲望そのものも、永遠に出られないような構造にしたのだと推察します。
映画館のフロアに大きく貼られたポスターを真正面に、座って映画上映時間を待ちました。
ポスターのオッペンハイマーの背後にはハシゴがかけられている。

石を植える事より種を植える事。

アインシュタイン曰く、時間は一直線ではなく過去、現在、未来があるなど幻想だ。
ノーランのこだわり続けた時系列の変換と歴史の重みが結実した一作。個人的にノーラン作品では最も素晴らしい作品だと思います。
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