こうみ大夫

オッペンハイマーのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
圧倒的編集賞の映画だった。そういう意味でジェニファー・レイムに最大の賞賛を送りたい。ここまで難しい題材(ほぼ2本分の映画やってるようなもの)を見事に分かりやすくこなし、かつ脚のクラップの使い方や過去をすっ飛ばす圧倒的なテンポ感など、次世代の編集の方向性が示されたと思う。
ノーランらしくない映画と言えばそうだろう。今まで避けてきたようなセクシャルな表現も厭わず、ロバート・ダウニー・Jr.の舞台的な「かぶいた」芝居もふんだんに取り入れる。そのどれもは“気にならない”程度に失敗しており、何だか得意じゃないことをやたらやるなぁと思う作品だった。ある意味でノーランの「変わりたい」という前向きさを感じ取れたし、「映画製作」というテーマにおいては自分もまた映像主義的な作品を産み落としてしまったというオッペンハイマー的自責がノーランにもあるのかもしれない。いやきっとそうだ笑
実験成功に沸く大衆、そこに現れる象徴的な星条旗。音楽も相まってここまで悲しい思いになる「歓喜」のシーンは今後もなかなか作れないだろう。改めてノーランの力技の強さを知る。しかしその器用さ故に俳優の引き出しや印象に残るワンカットをもう自力では作れない監督にもなっている。ロバート・ダウニー・Jr.はある意味当て書きのような配役だったと思うし、そういう頼る演出にそろそろ振り切らないと行けない年齢なのかもしれない。キーマンはジェニファー・レイム。間違いない。
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