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オッペンハイマーのKHのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
4つの時間軸(留学から第二次世界大戦下の核開発、戦後の原子力委員会の議長、オッペンハイマーの弾劾、ストローズの弾劾)が同時に進行していく。
この映画の難解と言われる部分は時系列にあるため、オッペンハイマーの年表をあらかじめ確認しておくと難解さは感じない。
この映画は大きく分けて2つの物語で構成されている。

1つは核分裂による連鎖的なエネルギー爆発に取り憑かれた科学者の物語。もはや、目標自体が失われても(ナチスの敗北)その手段そのものが目的になってしまっている。
しかし観客はオッペンハイマーの視点から覗き見る事で、そのとてつもない高揚感(IMAXカメラの切り替えとセリフマシンガンで表現)とトリニティ計画での原爆の光を目の前にした恍惚とした表情が共有されてしまう。
しかしその使い道や責任には科学者は関与しないし、できないと度々自身に言い聞かせているものの、その結果はもちろんオッペンハイマーは分かっている。

もう1つは、オッペンハイマーの赦しを求める物語。戦後オッペンハイマーは水爆への開発は無用な核開発戦争を招くと警笛を鳴らしたが、冷戦下の赤狩りの流れで過去の共産党員との関係が問題視され弾劾され、晩年再評価されるまで表舞台を去ることとなる。
ここでオッペンハイマーは自ら断罪されることを望むような素振りが映像によって描かれる。オッペンハイマーの苦悩とそのエゴの間で揺れ動く感情の表現が素晴らしかった。
アインシュタインのそれでも赦しを与えない姿勢は恐ろしかった。

テーマはさることながら、それに伴った映像が完璧すぎて、オッペンハイマーが核開発する時の無邪気な興奮とその残酷さが伝わってきたのが一番すごい
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