くすのき

オッペンハイマーのくすのきのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

180分、片時も目が離せなかった。
映像、音、脚本、役者、作品のパワーに圧倒され、観終わった後に体力は残っていないし、複雑な気持ちを抱えて映画館を後にしたけれど、これは映画館で観ることに価値があるような気がする。良し悪しや好き嫌いで測れない魅力があった。
印象深いシーンは、トリニティ計画で人類最初の核爆弾の実験が行われるその時。首をギリギリと絞められるようなカウントダウンから爆発の瞬間、きっと爆音がくるとおもって身構えていたけれど、現れたのは画面いっぱいの炎と呼吸の音。それがあまりにも恐ろしくて世界が変わってしまったんだと絶望のような気持ちを抱いたと同時に、こんな印象の付け方があるのかと驚いた。モノクロとカラーの対比も特徴的だけれど、このシーンの劇場の緊張感が忘れられない。実験の成功に沸く人々を見て私は複雑な気持ちになったけれど、違うバックグラウンドをもつ人はどのように感じたのだろう。
映画を理解したくてパンフレットも購入。キリアンの「思考を刺激し、あなたを試すというのは映画作りの最も重要な役割」というコメントに納得。
見る前はテーマがテーマなだけあって、史実を正当化するのかあるいは贖罪的なものを感じるのだろうかと思ったけど、観た後の感覚は思っていたそれとは違う。そして反戦のメッセージが全面に押し出されるわけでもない。ただ、オッペンハイマーが変えてしまった世界の中で生きている人間として、もう無関心ではいられない。