けん

オッペンハイマーのけんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
監督・脚本 クリストファー・ノーラン

ノーラン節とも言える時間軸の動きや、真意を掴むのに文脈を理解していることが必要なセリフ回しには気合でついてゆくとして、これから観る人は当時のアメリカの赤狩りを理解しておくと良いかもしれない。

当時のアメリカは、ソ連や中国の共産主義(赤)を恐れていて、赤を排除する動きが活発化していた。その中でソ連からのスパイではないかと?と疑われるオッペンハイマーのシチュエーションから始まり、そこで終わるからなんだ。

この作品自体、原爆を最終的には悪として描いている。
原爆のおかげで戦争が終わったんだ、というプロパガンダ的な文句で終わらせることは、ノーラン監督はもちろんしない。オッペンハイマーが原爆の父として一躍ヒーローになって調子こきそうになるものの、多くの罪の無い人々を自分の物理学が殺してしまったことの罪悪感・苦悩がそれを上回るんだ。

原爆実験の映像演出はぜひ期待して観て欲しい。
強烈な光と爆風、そこにいた人たちの思い、そしてオッペンハイマーの心情、それらを同軸の時間軸の中でまとめきったノーラン監督の技量は、やっぱ只者では無い。
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