日本人として見るべき作品だとは思うが、かなり話が難しいのである程度の知識や理解力、学力が必要だと思うと広く薦めることはできない、そんな作品だった。登場人物がとにかく多く(だが誰が誰でというのはそこまで重要でないので、わからなくてもついていける)、さらに台詞量も膨大で話している内容も簡単ではないので、ぶっちゃけ頭の悪い人には難易度の高い作品。私も話の流れは掴めた程度の理解。
日本人として見るべきと言ったのは、歴史を知るという意味で、日本は日本の視点でしか原爆を知らないから、逆の立場の人たちが何を思っていたかは知った方がいい。昔見た「リトルボーイ 小さなボクと戦争」という映画でも、アメリカから見た原爆が描かれており、原爆投下のニュースに沸くアメリカ人たちのシーンがある。この作品のレビューを見るとわかるが、多くの日本人がこのシーンを印象強く受け取り、時に否定的な感想を持つ。でもこのシーンには実は続きがあって、主人公の少年に対してお母さんが「一つの都市がなくなったのよ」と話すのだ。私はこのシーンがとても意義深いと思っていて、本作でも原爆投下を成功と喜ぶシーンだけでなく、終盤でオッペンハイマーが二度の原爆投下で何人亡くなったのかを問われ22万人と語られるように、アメリカ視点でも失われた命の重さにも触れられる。
オッペンハイマーは原爆を作った責任を問い詰められるわけですが、作った一人を後から責めたってどうしようもないよ。他人から責められなくとも、投下された事実だけで、その威力を彼が誰よりもわかっているし、事実だけでもう押し潰されるような思いになるでしょ。しかも、純粋に自分たちが寝食を惜しんで全力を注いだものが形となり、世紀の実験が成功したとなったらまずは喜ぶのも頷ける。
あのトリニティ実験のシーンはこの映画の中でも白眉だと思う。成功するか失敗するか、その後の国の動きにも関わる大実験、私も息を飲みました。
とにかく、難しかったけどすごかったです。
