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オッペンハイマーのアーのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「自分の犯した罪の結果に同情しろと?」

この映画は、

・原爆や原爆開発の話ではなく、オッペンハイマーの話
・広島と長崎で22万人以上を殺戮した兵器を開発した話ではなく、世界を破滅に導く兵器を開発し、それが開発した者の手も離れ歯止めが効かなくなる話
・なのでヒロシマ・ナガサキは主軸ではないし、それは結果ではなく終わりの始まり
・ゆえにヒロシマ・ナガサキの惨状よりも冷戦下の米ソ対立に軸が置かれる(そしてそれが私たちのこの現在と未来につながる)
・赤狩り云々は興味ないという意見もありますが、彼はプロメテウスなんです、火をもたらすだけでなく、鷲に肝臓をついばまれるまでがセットです

と私は考えました。ファンの贔屓目と言われればたぶんそれはそう。でもあれこれ穿ったことを考えなくても、タイトルとテーマに殉じたらこの作品はノーランの作ったこの形に収まるんじゃないかなあという感想をもちました。あと、この映画が反核の映画かどうかという話がありますが、この映画が特別反核のメッセージを打ち出そうとしているのではなく、オッペンハイマー自身が戦後そういうスタンスを取っていたわけで、オッペンハイマーを描いたら結果的に映画からもそのようなメッセージが感じ取れるようになった、ということに見える。これも作品に殉じた結果なんじゃないか(もちろんそれを見越して作っているのかもしれない)。

ところで、被爆国として意見を表明するのはとても大事。でも怒ってすっきりするだけではよくない。
アメリカは悪い。でも一方で日本人はきちんとあの戦争に向き合えているか?日本軍が東アジアでしたことをどれだけの日本人が知っている?特攻兵を感動物語の悲劇の象徴として気持ちよく消費し続ける私達はこの映画に石を投げられるか?ちゃんと学び考えなくてはならないなあと改めて感じた次第です。
日本代表としてノーランと対峙した山崎貴監督ははたしてこの映画にどのようなアンサーを返すのだろう。
アー

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