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オッペンハイマーのツクヨミのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.6
凄まじい後悔と罪悪感をクロスカッティングで描き切ったノーラン。
クリストファー・ノーラン監督作品。2024年アカデミー賞にて作品賞含む最多受賞、あのノーランが快挙ということで意気込んでいってみた。
まず本作はオッペンハイマーという実在した人物の半生を綴った伝記映画になっているがそこはノーラン、前作"TENET"他よろしくクロスカッティングなどの編集による初見殺し感が強い。常に3つぐらいの時系列が容赦なく切り替わっていき、また登場人物などの説明も控えめでわかりにくい点は"ゴッドファーザー"シリーズに通ずる見にくさ、だが鑑賞を重ねるごとに理解できていく作品であろう。
あと今作、ノーラン作品にしては爆発描写などアクションシークエンスは一つしかないのが珍しい。ほとんどが会話劇で、常に物理学や法定みたいなややこしい会話が字幕を占めてしまっておりなかなかに見にくい。なのでノーラン作品の中でも意外に一般層には受けないのではないかと感じるほど。
しかし会話劇をクロスカッティングさせることで、見応えある映像を作り出す。ただ会話を紡ぎ合わせていくだけの編集なのに何故こうまでして飽きずに見られるのか全くわからないほど面白かった、上映時間3時間にして体感時間2時間ほどに感じるほど。会話シークエンスクロスカッティングの合間に挟まる物理的な映像などいろいろと仕掛けがある編集がなんとも素晴らしい。
そして3時間の間で紡がれる愛と憎しみ、または原爆を作ってしまったことによる後悔と罪悪感を映像で語るドラマもまた凄い。キリアンマーフィーの表情で見せる後悔の表情、孤独と愛を抱えたフローレンスピューの表情は忘れられない顔映画にもなっている。
あとなんといっても原爆実験や広島原爆投下後の祝いの席での音響に震えた、IMAXで鑑賞したのもあるがマジで怖すぎて震えるほどの音圧。原爆の恐ろしさをめちゃくちゃシンプルに描きだしていたのが素晴らしく、実はどシンプルに反戦や反原爆の要素がある作品なのだと理解。映像としては会話シークエンスばかりでIMAX映えはしないんだが、音響に関してはマジでIMAX案件、是非一度はIMAXで鑑賞して欲しいパワーに溢れている。
ノーラン作品の中でも確かにいろいろと咀嚼しずらい作品ではあるが、見るたびに旨みが増しそうな実はスルメ映画かもしれない。機会があればできるだけ鑑賞したいほど個人的ノーラン作品の中でも好きなほうの映画だったなぁ。
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