椎良

オッペンハイマーの椎良のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
引火

〈その理論は、戦争を終わらせた。
原子爆弾を作り出した科学者・オッペンハイマー博士。その輝かしい功績とは裏腹に、時代の波に飲まれ 苦悩に苛まれていく。〉

ワーナーと手を切ったクリストファー・ノーラン監督作。センシティブなテーマ故か、長らく日本未公開が続いた末のビターズ・エンド配給が話題に。R15+指定。
史実をもとにした作品で、序盤は機密スリラー、中盤は重要兵器誕生の瞬間を追う歴史もの、そして終盤は………と複数のジャンルが混合しているという印象。

音響良さげなところで見たせいか、初っ端から床や席に響いているのヤバい。そしてトリニティ実験シーン…何としても劇場で見て欲しいと思う。あのレベルの緊迫感とカタルシスを次いつ味わえるか分からないからである。後半でも音の演出がかなり活きてくるので、画角はともかく音響がスゴいところでの鑑賞をおすすめ

理論・開発だけに目を向けていた彼は、自身が導いた結果と向き合わざるを得なくなる。思想・科学・国際政治が絡み合うドラマを、オッペンハイマーに寄って描くことで浮き彫りになる業の深さ。
それらを豪華キャストの重厚演技で見られる贅沢さがあった。

しかし、語り手が二人・過去回想と現時点の話が混ざる・会話テンポが早すぎる…とかなりとっつきにくい。物語が進むにつれ、その名前がどの人物かを把握する作業がしんどいため最後も起きていることは分かるがスッキリしない。共感がやや難しい博士の気質も相まって、置いてけぼり感はこれまでになく強めかも……
原爆による直接被害についてほぼ描かないのはテーマや世論を考えてまあ妥当という感じはあった。

この時代においてどうしようもない重みを持った、エンタメ大作である。
椎良

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