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オッペンハイマーのABBAッキオのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
 2023年アメリカ。クリストファー・ノーラン監督が原爆の父と称されるロバート・オッペンハイマーを描いた長編(3時間)作。映像技術を追求したキューブリックの後継者に一番近いと思われるノーラン、本作では時系列を縦横に切りとるモンタージュ手法とニューメキシコ・ロスアラモスで行われた核実験の特撮を駆使した。
 もちろん原爆開発が中心ではあるが、本作全体は冷戦という時代と原子力を手にする人間というテーマをオッペンハイマーという人間の複雑さに仮託した描写となっている。特に冷戦の文脈で行われたオッペンハイマーに対する政治的追求と、オッペンハイマーを核政策から排除しようとしたルイス・ストローズの策略は日本人にはあまり知られていないこともあって本作の内容について行くことは大変だろう。
  それでも本作は見る価値が十分にあると思う。本作ではやや戯画的に、平和を志向する科学者の典型としてアインシュタインを、原子力の力を軍事的に利用することに躊躇せず、水爆開発を主張する科学者としてエドワード・テラーを配し、その間で苦悶する人物としてオッペンハイマーを描いている。原子力の発見と利用がいかに大きな出来事だったか、そしてその結果の影響は広島、長崎で終わったのではなくその後も今日まで大きな疑問と対立を生んでいることを示唆していると思う。
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