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オッペンハイマーのchanmoreauのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.2
さほど優れた作品とも思えないし
日本人としても嫌〜な気分になったけれど
まぁいかにもノーランらしい作品だなぁと😅

昨夏に全米で「バービー」と共に大ヒット
「バーベンハイマー」なる造語も生んで
バービーは日本の興行でトバッチリ受け
ビビった東宝東和は作品をリジェクト
日本公開が危ぶまれたものの
ビターズが名乗りを上げ結果的には
米アカデミー受賞後の最高のタイミングで
本邦公開というのが何とも皮肉😕
そして本作自体も正に「皮肉な運命」を
テーマに描いた話なのだった

ノーランは近作をずっとWBで撮って
製作費も高いけど興収結果も出してきた
WBの重役会議でグリーンライトが直ぐ灯る
つまり自由に企画を通せる監督が2人いて
ノーランとイーストウッドなのだという
そんなノーラン念願の企画だった本作を
WBでなくユニバーサルが製作した経緯は
知らないけれど結果的に本作はノーランの
キャリア史上最高の興収を全世界で叩き出した
これ以上の皮肉があるだろうか

なぜノーランはオッペンハイマーに惹かれたか
技術屋として未到の地を切り開き成功し
その結果意に沿わない結果が生まれ葛藤する
その姿は監督本人にピタリと重なる
つまりオッペンハイマーとはノーラン自身の
完全な写し鏡なのだ

信者にはホント申し訳ないけれど
俺は初期からノーラン全作品を劇場で観ながら
技術的にはすごいと思うけど心が動いた事が
全く一度たりともない
というかノーラン自身も感情をどう扱うか
よりも感情を超えた映像で人を驚かす事にしか
興味関心がないんだろう
彼の好きな映画リストには「2001年」
「ブレードランナー」など技術志向の
作品がずらりと並んでいるし
俺は技術というのは目的ではなく
感情を描くための手段に過ぎないと考えるので
この溝ばかりは埋め難いものがある

勿論今回も技術は本当に素晴らしい
夜の照明も「実験」での映像インパクトも
忘れ難いものがある
役者もキリアンはじめ皆素晴らしい
でもだからこそ観ていて哀しく冷めていく
あの「実験」で生まれた明け方のキノコ雲を
思わず映像として美しいと思ってしまう
その後に起きた事など想像もせずに
そんな我々の感覚こそが試されている

本編は原爆実験へと進む戦前と
非米活動委員会に睨まれる戦後の姿が
時にモノクロ映像を挟みながら混合して
描かれていく
戦後赤狩りの対象になりながら
最終的には嫌疑は晴れ認められる
恰も免罪符を与えられた英雄の如く
つまり原爆犠牲者への贖罪は一側面で
3時間という尺のごく僅かに過ぎない
ノーランもさすがに原爆資料館を訪れ
最低でも今村の「黒い雨」位は観たと思うが
やはりこの程度が英で生まれ米で稼ぐ監督の
やっと想像できる範囲の良心で限界なんだろう

見事な技術で人を驚かす才能はあるのに
人間の機微や感情を心から理解できない
そんな主人公と監督が完璧にシンクロした
ノーランの代表作がこれほどヒットする
全世界はおろか、この唯一の被曝国でさえも‥
ノーランがそこまで見通してたとしたら
主人公が目深に被っていた帽子を脱ぐが如く
まさしく脱帽という他ないなー😅
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