不乱苦

オッペンハイマーの不乱苦のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
2.5
ドルビーシネマで鑑賞。絵よりも音が大事な映画なので、多分IMAXよりドルビーシネマとかドルビーアトモスの方が良いと思う。
非常に難解でわかりづらいとの前評判だったので、ネット記事やYouTube動画などで予習してから観たら、割と観やすかった。事実を元にしてるんだからネタバレも何もないしね。
撮影はホイテマだから、絵作りを見てるだけでも十分楽しめるし、音の使い方もものすごく力が入っていて観るものを引っ張ってくれるので、3時間たっぷり楽しめる。が、話としてはとっ散らかってて何が言いたいのかよく分からない。好意的に捉えれば「観客に解釈を委ねている」と言えるのだろうが、委ねるのと伝え損ねているのとでは違う気が。

そして重要なのは、この映画はオッペンハイマーと原爆についての映画というより、オッペンハイマーと赤狩りについての映画だということ。映画序盤から共産党員の弟に共産党員の愛人、共産党員の友達、そして元共産党員の奥さん、と、出てくる関係者の中に共産党員が次々に登場して、オッピーもめっちゃ誘われたり片足突っ込みそうになったりしてる。原爆の実験中もオッピーの人間関係について、主にアカかどうかについて執拗に注意されてるし、そして戦後の場面は「お前アカだろ」と延々詰められっぱなし。この映画を、予備知識なしで赤狩り映画だと思って観に行った人は、さすがにいないんじゃないかしら。そして観た人の殆どが、「原爆の父としてのオッピーの映画」と思って評しているので、赤狩り映画としての視点があまりない。

アメリカでは大ヒットをしているらしい。助演男優賞を取ったロバート・ダウニーJRの役柄も演技も賞を取るほどとも思えないし、ちょっとアメリカ人じゃないと理解できないところの多い映画なのではないかと思った。でも、日本人としては観ないわけにはいけない映画だろう。

そういえば初めの方で、オッピーが春の祭典を聴いてて、レとベルが映るカットでわざわざ「春の祭典」て字幕が出たのに、その後のオッピーのセリフで「ピカソもマルクスもストラヴィンスキーも」とか言ってるところでは字幕でストラヴィンスキーは省略されている意図が不明確で気持ち悪かったが、そういう気持ち悪さの満載な映画だ、ということが言いたかったのかもしれない。

3時間あっという間、という映画ではない。終戦ぐらいから「あー、まだ終わんないんだろうなぁ」と、しっかりと長さを感じさせる作品だった。ストーリーは、字幕を追い切れないぐらいのスピードで進むので退屈はしないが、もう少し落ち着いて見せるために無駄な要素(春の祭典かけるところとかピカソの絵を見てるところとかファインマンがボンゴ叩いてるところとか)を削ってじっくり見せるか、2時間ぐらいにまとめるかして欲しかった。
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