かえるのエリー

オッペンハイマーのかえるのエリーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
ノーランはイヂワルな人だ。一度観ただけで簡単に理解できるような作品を作らない。そういう意味では観客に何度も観させる商売上手とも言えるし、何度も楽しめるサービス精神旺盛とも言える。

想定以上にエンタメ性が低く、想定以上に私の大の苦手な物理の内容が多く、3時間という長期戦も相まって、前半はだいぶ「長い瞬き」連発。ただ原爆に着手し始めてからは心が騒ついて目が覚めてきた。





以下ネタバレ感想





実在の人物と実際の出来事を追うとドキュメンタリー感が強くなりそうなところを、エンタメにとどめているのは、全編に渡ってほぼBGMがある事が影響してそう。サウンドが売りの劇場で観たから、余計にそう感じたかもしれない。

ニューメキシコでのトリニティ実験が大きな山場となるが、そのド迫力と爆音に圧倒されると共に、原爆をあんなに傍で見ていた人々に驚きが隠せなかった。被曝しそうな勢い。この世で初めての原爆だった事を思うと、事の重大さを理解してない人が多いと思わざるを得ない。

「メメント」同様にカラーと白黒が交互に差し込まれる。時系列と思いきや、そうではない。パンフレットを読んで(そう言われれば)とスッキリ。冒頭のタイトルをすっかり忘れていたよ。

キリアン・マーフィーを初めて観たのは「28日後」だったと思う。生理的に好きじゃないタイプだったのだが、ポール・ダノ同様になんだかんだ観ていて、本作も彼が主演だから止めよう、とは思わなかった。ただ、原爆の父=アメリカ人(ドイツ系とのこと)という強烈な印象にコテコテのアイリッシュの彼を据えたのは、やっぱり私にはしっくりこなかった。他のノミニー達の映画を観ていないのでなんとも言えないが、彼が主演男優かぁ。。。

マット・デイモンを脇役にするほどに、その他演者も豪華。エンドロールで一番ビックリしたのは、ジョシュ・ハートネット!久々すぎて全く気付かず。

当初、臭いものに蓋をしようとしたのか、日本での公開は未定だったが、本国から半年以上遅れたとはいえ上映されたことを嬉しく思う。被曝した日本を映さなかったことに賛否あったが、本作はあくまでも一人の物理学者の栄枯盛衰の話なので、そこを問うのは不毛だろう。むしろ、日本人目線ではなくアメリカ人目線の原爆を知れたことは私にとっては勉強になった。無論原爆を認めることなどないが、物事は常にあらゆる方向から見るべきだから。