にゃっぷ

オッペンハイマーのにゃっぷのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ノーランで一番良い。情報洪水に身を任せるIMAXでみて損なし。
つまんないとか、IMAXで見ても意味ないとか言ってる奴は、歴史の勉強してなさすぎか、英語がわかんないから字幕しか(字幕は補助)読んでないからわかんないんだな。主語は英語で言ってても字幕では大概割愛されているから。まあそんな文字で読む映画じゃないけど。

映像物理と心理の融合を試みてきたノーランだが、マジモンの物理でそれやりよった。
レッドパージの異端審問に吊し上げられる(オレもユダヤ人でさーとか仲間のふりするロバート・ダウニー・Jrに陥れられた)オッピーが貶めようとする意図しかない疑いに呆然としながら立ち会っている場面が通底シーン、そこに原爆開発、水爆開発の阻止、広島長崎への投下(画としてはないが、彼の頭の中で計算できる光、爆風、ただれ垂れ下る人の皮膚、炭になった人間を踏み抜く表現は現れる。広島長崎シーンがないって言う批判があったが、え、あるやん。何見てんの?って感じ。国や都市を攻撃したことでなくて、自分の目の前にいる仲間である『人』を殺戮し吹き飛ばしたことは完璧に表現されている。国や都市としての画にしていないことにこそ、意味がある。国や都市を描くと、一つの国や都市を破壊した戦争行為しか描かない。ノーランの意図を理解せや。)。多少の全能感ありながらも、ソ連との抑止関係を目指し、信じて原爆の開発に邁進。共産主義者の弟夫婦やらとの関わりやら女性がらみやら、そして、何十万人殺し、歴史を変えた罪の呵責という、政治から、研究から、人間関係、個人のどうしようもなさまで大量の情報がまぶされる。
何が言いたいって、人は高みを目指す知性を持っても、戦争を終わらせられないし、平気で大量殺戮するってことが。今もって全く終わらんということに、人類に絶望するんだわ。2023,4年の人類が何をこれから受け取るかを間違いなく描いていて、単に史実ドラマをめくってるのではない。日本人がーとか、いう狭い世界でなく。ユダヤ人がーとか、アメリカがーとかマジ無になる。無にする映画。

すでに負け確定の日本に原爆落としたという表現と、核戦争の脅威に世界を導いたアメリカの罪はしっかり語られている。日本にとって不都合なことは何もない。なんで東和が公開ひよったのかわからん。

大量殺戮人類は共食いや群れ内のわずかな殺戮をするくらいの猿に帰った方がマシでしかない。文明止めろってかんじ。唯一の被爆国とかいいながら、原子力発電所爆発させた日本というこの国の脇の甘さというか、矛盾を孕んだ存在こそ、プロメテウスの火を扱えないことの象徴だってことも含めて、この一本の映画を見てる間に思う歴史と日本やイスラエルや今後の人類について絶え間なく頭がぐるぐるすることから逃れられない。3時間あったと思うが、一秒も時間は気にならずあっという間に終わった。
あと音楽がなりっぱなし。ノーラン作品は鳴りっぱなしの印象だが、量子をあらわしているんかね。IMAXでなかったら、ドラマと音との融合は迫力薄のはず。だだ音のないところ作っても良かったんじゃとは思う。特にブラックホールのとこ。
これでもかという人の力とバカさと無力さの映画。

あと、狂った映画好きとして、フローレンス・ピューの会議室全裸及び全体的にフローレンス・ピューの頑張りを讃えたいし、なくても成立しそうな、これをぶっ込んでくるノーランには脱帽。