ちーたら

オッペンハイマーのちーたらのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
鑑賞まで半年以上待った、長かった…。

内容も時系列も複雑だが、これぞノーラン節と言わんばかりにギミックがふんだんに詰め込まれていた。ただ体感90分くらいに感じたような気がするくらい、飽きないようよく練られた構成になっていた。
史実を基にした作品なのに、ここまでのスケールの作品を作り上げたことが凄い。本作がノーラン史上最高傑作といわれるのも納得のクオリティだった。

原爆投下シーンに関して、広島・長崎の描写はほぼなく、惨状を目の当たりにしてオッペンハイマーが目を背けてしまう場面はあれど、日本と向き合う描写はどれもが間接的な表現なのが寂しかった。これにより、本作は明確に反戦映画とも反核映画とも形容しがたい作りになっていた。いち鑑賞者として監督の意図は何となく伝わるし、説明的すぎるとうんざりしてしまうこともあるが、それでもやっぱり本作に関しては直接的に表現して欲しかったと思ってしまう。トリニティ実験のシーンをCGに頼らず実写撮影のみで作り上げたというのも、本来は称えられるべきポイントかもしれないが、本作においては裏目に出ていたように思う。

こうでもしないと戦争は終わらせられなかったのかと考えると辛いものがある。本当にそれが正解だったのかは分からないが、やはり原爆はいけない。ただこの出来事に対して被害者という立場からのみ物を言うのもいけないとも思う。正義なんてものはとても曖昧で、立場により異なるものだから。何が言いたいかというと、日本人こそこの映画と向き合うべきということ。この作品から目を背けてしまう行為こそが、戦争に対して無関心なように思え、あの時代を生きた先人たちに対して無礼だとも思う。ぜひ一人でも多くの人がその目で、その身体で向き合って欲しい作品です。
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