マーティンルイス

オッペンハイマーのマーティンルイスのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
アメリカン•プロメテウスがもたらした炎は消えることなく、今もなお人類に有り余る力と責務を課している。

オッペンハイマーの内なる心情を描いた”核分裂”
このパートでは原爆完成までの緊張感と、言い得ぬ胸騒ぎや好奇心が高まり、待ち受ける悲劇に囚われる。あの爆発は原爆投下と地続きで、世界が崩壊する発端ともいえる。この一連のジレンマがもたらした結果の遅発性が招く連鎖反応は継続中であり、我々が臨界で在り続けるには、安定と破壊は紙一重という危機感を求められる。
一方でストローズからの視点で語られる”核融合”
このパートが浮き彫りにする人間の二面性は、絡みつく感情をリアル且つ劇的な心情として描く。また、各々の視点で関係性や見え方の違いを紐解く手法も鮮やかだった。慧眼への羨望や野心に溢れ自己理解を求める脆さ、湧き上がる想念を抑え盲目の贖罪を乞う実直さは、対照的ながら表裏一体である。

核兵器の脅威は攻撃した瞬間ではなく開発を始めた瞬間から生じ、今を生きる全ての者に付き纏う。世界が破滅する連鎖反応に終わりは来るのか。
ラストシーンが忘れられない
マーティンルイス

マーティンルイス