フジモト

オッペンハイマーのフジモトのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
まずはジョシュ・ハートネットを長尺で見られて満足。
また、今回の劇伴はハンス・ジマーではなかったが、こちらもすごくよかった。

同時に見せられる時間軸が3つというのは、ノーラン作品にしてはわかりやすいほうかもしれない。
赤狩り当時の情勢は予習してから観るほうがよさそう。
少なくともストロース長官就任についてはまったく知らず、後で調べて理解した。

オッペンハイマー来日時の様子とかを日本人目線で見た身としては、今回どれだけ「被爆国への配慮」的なものがなくともそれに対しては怒るまい、というのが観る前の姿勢でした。
観終えた今は、穿った見方をするなら我々の目も意識した、もっと単純に感じるならより個人の揺らぎにフォーカスした、映画作品らしいまとまり方になっていて、少し安心したような、拍子抜けしたような感覚でもあった。

「罪を憎んで人を憎まず」ではないが、トルーマンの言ったように、やはり事実オッペンハイマーその人を恨む日本人はそうは居ないのではないか。
もちろん、自分に彼と同じ才があったなら、やはり同じように慧眼をもって眼前の科学的大発明を達成し、盲目を装って立ち振る舞う以外の術はなかっただろうと思う。
少なくとも、自分の手が血塗られたように感じると言った彼の恐れは、スピーチシーンで十分に伝わってきた。

しかしやはり、常に思うのは、核はだめ、地雷はだめ、枯葉剤はだめ、拷問はだめ……
「戦争はだめ」「人殺しはだめ」はいつかの世界で正式な文書になるだろうか?
「人道的な戦争」なんてものが存在し得ないことを、とっくにわたしたちは知っているはずなのに。
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