魂を揺さぶるノーラン史上最高傑作の反戦映画。
ノーラン監督は好きで基本全て見ている。
ただ今回は、西洋人が作った原爆の映画ということで初めは映画館では観る予定はなかった。
あまりに評判が良いため本日見に行き正解であった。
何と物悲しく、深く、哲学的な映画であろうか。
難解という声があったが、私にはわかりやすいくらいよくわかった。
なぜ難解なのだろう？
一緒に見た母とも言っていたが、この過度なスマホ社会、過剰な説明社会が人々の想像力を奪っているのか。
私には他のノーラン作より遥かにわかりやすかった。
そして、広島、長崎を描いていないと言う声が多く聞かれるが、充分描いているではないか。
むしろ最初のプロメテウスへの言及、アインシュタインとの会話、最後の言葉が全てである。
そして何より、キリアンマーフィーの素晴らしいこと。元々大好きな俳優さんだが、本作を観てさらに好きになった。あの澄み切ったブルーの瞳は非常に多弁だ。
実際の映像は見せないが
広島長崎の惨状を移す映像を見る彼の瞳が全てを物語る。
私は被害者ではないから大きなことを言えないし、代弁ももちろん出来ないが、
日本人として涙が止まらなかった。
ノーランはどちらにも肩入れせず、徹底した一人称でドキュメンタリーのようにオッペンハイマーの心象を描き切った。
IMAXで見てよかった。
これからの方は是非IMAXで。
観るものを選ぶ映画だ。
そして周りを固める競演陣の豪華なこと。
フロレンスピューとのシーンは過剰との見方があるが、オッペンハイマーの人間くささ、脆さ、醜さ、狡さを描くために必要であったのだろう。
エミリーブランドも素晴らしかった。
そして、ロバートダウニージュニアの憎たらしいこと。さすがと言うしかない。
私は三時間、飽きることも睡魔に襲われることもなく、見切ったが、映像と音楽に没入する究極の映画体験をさせてもらった。
我々人類は恐ろしい武器を手にしてしまい、今まさに戦争の渦中にある。
帰り道、電車のなかで、
なんて恐ろしい世界にいるのだろうと思った。
人類皆が見るべき。
このような映画を作ってくれたノーランには心から感謝したい。
