あまいさと

オッペンハイマーのあまいさとのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
35mmフィルム上映にて。

関連する史実や人物についてはある程度抑えた上で観たが、特に予習しなかったとしてもまずは十分に理解できると思う——少なくとも一度の鑑賞においては——。というか時系列が前後したりテンポが早かったりと、情報の密度が半端でないので、バックグラウンドまで味わっている余裕がない。繰り返し観るのであれば、その都度学びを進めていくとより発見が増しそう。

35mmフィルムは、IMAXと比べて解像感などの面でかなり制限される。脳内のリソースが小さい自分にとってはそれがちょうどよかった。特大画面に超高解像度で投影された映像では、おそらく画面に圧倒されてしまって、言葉を追ったり時系列を構築しなおす余裕はなかったことだろう。もちろんフィルムならではの質感やダイナミクスを堪能できたという意味でもよい鑑賞体験だった。

一方、音響は可能な限り優れた環境が“必須”といってもいいかもしれない——109シネマズプレミアム新宿はすばらしかった——。大爆発の轟音や振動から小さな息遣いまで、さらには無音も含めて、大きく感情を揺さぶる要素だった。

原爆に対する葛藤や贖罪、倫理的問いかけ、もちろんそこは描かれているし、真摯に向き合われているように感じた。

でも、全体としては個人の内面を描く作品だと受け取った。

絶対に理解も共感もしたくないオッペンハイマーという人に、半ば強引に感情移入させられる。極端なほどのクローズアップ。差し込まれる脳内映像。加えて先述の音響。観客を主人公の内面に引き込む映像表現の強度があまりに高い。

そもそも自分にとっては、そうでなくてもオッペンハイマー自身の言動や気質に共感してしまった。気が小さいくせに他人の気持ちを想像できないところ。評価や権利を与えられたら深く考えずに舞い上がるところ。目の前の興味に夢中になるあまり長期的な視点で物事を考えられないところ。そのせいで死ぬほど後悔するところ。でも彼は天才なんだけど。

IMAXでもう一度観たら追記します。