いやー良かった。ノーランに関してはアンチまで行かずとも彼の世間一般の受容のされ方にズレを感じるが故に決して好きな監督ではなかったが、本作でノーランと和解できたような気がする。見直した！
彼は内面描写でこそ能力を発揮する監督だったのか。スペクタルを描く技量は凡庸(というか描かない)だが、オッペンハイマーという一人の科学者の孤独な内面世界を描くという点では素晴らしい仕事をしたと思う。被曝地・被爆者の描写は当然あって欲しかったが、一貫して一人称で物語を描くという意味では納得できる。アメリカ人監督がアメリカ資本で作る映画で被爆を描けというのが土台無理な話ではあるし。
業を背負った科学者はどう裁かれるべきかというテーマに対するシビアな結論は非常に良かった。何とも寂しいラストカットはC•マーフィーの見事なやつれ演技も相まって素晴らしかった。オッペンハイマーの女好きな側面にフォーカスしたりとメロドラマの見せ方が上手いので3時間の尺は余り感じなかった。終始劇伴が流れっ放しな作りは好みと全く合わないなとは思ったが。ラスト1時間のポリティカルサスペンス的展開が一番面白かった！
そして豪華過ぎる役者陣、嫉妬に狂うR•ダウニー•Jrの演技は少々オーバーアクト感もあったが面白かった。C•アフレックは久々に大作で見たが非常にハマり役、J•ハートネットもお久しぶり。F•ピューは精神的に不安定な役柄が板に付いた感がある。
ノーランは本作で映画作家として一段上のレベルに上がったと思う。エンタメ超大作として立派な出来だった。
