andes

オッペンハイマーのandesのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
最近のクリストファー・ノーランらしく、「なんか重厚」な感じの映像と音響で引っ張る。確かに一定の緊張感は持続しているし、細かい編集で3時間走り切る力はあった。ただ、そもそも変な構成の映画で、冷静にみれば1本にまとめるには無理がある気がする。
時制を入れ替えてなんとか場面のつながりを出してはいるが、原爆完成あたりがピークで赤狩りパートのテンションは落ちる。後半も悪くは無いんたけど、ストローズが小物なので悪役としても微妙だし、そもそも説明不足。それをいうと妻との関係も描写がたりず、「詰め込み過ぎ」という印象。
オッペンハイマー自体がぶっ飛んだ天才なので、ストーリーには事欠かず面白くはある(この辺は『アマデウス』とか『シャイン』とかも)。そうすると、やはり前半と後半は別の映画なので、もっとフォーカスを絞っても良かったと思う。テクニックでなんとかまとめてはいるけど。
さて、原爆の描写だが映像としては拍子抜け。爆発自体はもっと苛烈にできたと思う(ただ意図的。この映画は原爆の映画ではないということだろう)。被爆の恐怖は描かれないが、この映画に関しては大きなマイナスではないと思う。とはいえ、描き方に工夫ができた気もするが。
いろんな方向へ気を使っており、それは一定の成果を収めていると思う。大作としてロードショー公開できる範囲で、戦勝国、敗戦国、第三国に一定の距離感を保っている(なので人によってはヌルい)。個人的には「入口」になる映画ではあると思う。ロス・アラモス建設から実験に行く流れは妙な緊迫感があり良いと思った。
andes

andes