いづる

オッペンハイマーのいづるのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
アメリカでの不謹慎な騒ぎのニュースを見て嫌悪感を抱いたため,本作を観ようと思っていなかった.

日本での公開直前に NHK バタフライエフェクトでオッペンハイマーが取り上げられた回を見て,オッペンハイマーという人間に興味を持ち,観てみたくなった.

観てよかったと思っている.いい意味で思っていたのと違う内容だった.

本作は,原爆の父 オッペンハイマーによる原爆開発物語ではなく,原爆の父となったオッペンハイマーの物語である.と,私は思う.

原爆の父になるまでを丁寧に説明したため 3時間になってしまったように思う.正直言って長い.2時間半に収めていいように思った.前半は何度が気を失ってしまった.レイトショーだったもんで,...(笑)

長い割りにオッペンハイマーの性格や,他の物理学者(特にローレンス)との関係については説明が足りていなかったように思う.このあたりはバタフライエフェクトを見ていたので補うことができた.っていうか,バタフライエフェクトのオッペンハイマーの回は,映画の雑な部分を補足するために企画されたのではないか,と思ってしまう.

後半は没入感がハンパなく,寝ている暇がなかった.

8月 6日生まれの私は,物心ついた頃またはつく前から,自分の誕生日のテレビ番組が普段と違うことを感じていたこともあってか,第二次世界大戦の戦勝国と戦敗国の両方が,どのようにしてあのようなことをしたのかを知るために,さまざまな書籍やドキュメンタリー,映画などを読んだり観たりしている.事実はひとつだけど,真実は立場の数だけあり,正当化するためにかなり歪められることも多いを実感する.

この映画を観たあと,過去に観た「日本のいちばん長い日」を改めて観てみようと思った.早く降伏していたらどうなったのか? 米国が原爆を使わなかったらその後の世界は変わったのか? 変わらなかったのか?

印象的だったのが,本作でマンハッタン計画のメンバの会話に「ジェノサイド」という単語が出てきたこと.実際の当事者たちはどう思っていたのだろう?

これから本作を観る方は,可能であればバタフライエフェクトのオッペンハイマーの回,マンハッタン計画がどのようにしてウランを手に入れたのかの回を見ることと,後半の理解を深めるために米国の赤狩りについて少し調べておくことをおススメする.

チャップリンが大好きななので,フーバー長官は私の中では大悪人なのである.
いづる

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