アカデミー賞受賞映画とは割と相性が悪い僕の映画の好みですが、この映画は文句なしの傑作です。
IMAXレーザーGTで鑑賞。当然なのですが迫力と臨場感が桁違いで、この映画をこの環境で観られることに感謝。
原爆の父、オッペンハイマーの原爆開発に関する伝記的映画を、クリストファー・ノーラン監督が作ったらこうなったという、期待通りの重厚な傑作。
日本公開が危ぶまれ、結局1年遅れぐらいで観れることになったわけですが、この内容で日本公開が見送られていた理由が全く不明。
原爆賛成映画でもなく、開発の中心人物であったオッペンハイマーのその後の苦悩のしっかりと描かれ、核開発競争社会の危険性などのメッセージ性もしっかりあり、批判していた人がいたとしたら映画を観てないのではと思うぐらい。
原爆投下後の悲惨なシーンが描かれていないという批判もあったそうだが、オッペンハイマー自身が見たことを中心にしている点から違和感なし。もっと言えば、その実情を見ずとも、投下されたことを知っただけで結果をある程度想像でき、そこから苦悩が始まるという演出は、映像がなくてむしろ効果的だったように感じました。作った本人が、その結果を最も理解しているという点において。
もちろん、戦勝国のアメリカが大正義だったという描かれ方もしていません。むしろ良くぞここまでアメリカ内に問題提起してくれたと感じるような演出がしっかりありました。核軍拡を進めたい国と、そこに熱狂する者、核軍拡に暗雲たる未来しかないことを暗示するかのような演出など、恐ろしさを感じました。
また、俳優陣の演技も素晴らしかったです。特にロバート・ダウニー・Jrさんなんかは、最初ご本人とわからないぐらいの演技力で、最近ではマーベル映画のイメージが強かったトニー・スターク/アイアンマンのカリスマ性を完全に消して演じられており、感動すら覚えました。
1点、これは反省点でもあるのですが、とにかくオッペンハイマーや核開発競争のことを知らなさすぎて、聴聞会のシーンなどで誰が、何をして、どうなった、という展開の理解が追いついていないところ。
パンフレットを読み込むなどしてもう少し勉強してから見直したいと思います。
