MasahideYoshida

オッペンハイマーのMasahideYoshidaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
2024年公開
監督.: クリストファー・ノーラン
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原爆の父、ロバート・オッペンハイマーが、いかにして原爆を創り、その後の人生を生きたのかを描いたお話。

人間には、人間という存在をちゃんと扱うのは荷が重いのかもしれないという物語。ギリシャ神話でも、バガヴァッド・ギーターでも、主人公たちの突き進む道をまるで暗示するかのような警句は記されているというのに、それでも繰り返すということは、人類の集合知を、人一人の好奇心や勤勉さ、責任感、嫉妬、立場、忖度などは平気で塗りつぶしてしまうということなんでしょう。人間、本当に難しい。その時その場に自分がいたとして、どうすればよかったのかを我が事として考えてみればみるほど、本当に難しい。そんな、難しさを噛み締める映画なのだと思います。

日本の被害についてあまり描かれていないじゃないか、という意見もあるようですが、僕の感じたことは、アメリカの独善性や、一面からしか事象を見ることしかできていないかったという冷徹な事実を、「描かない、ということで、描いた」んだと思います。クリストファー・ノーランは、そういう監督ですきっと。

重たい映画ですが、映像・音楽・演技、一級なので、それだけでも見る価値あり。是非劇場で。