ヒダリー

オッペンハイマーのヒダリーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
「アメリカのプロメテウス」「原爆の父」ことオッペンハイマーに否が応でも感情移入させられてしまう恐るべき映画の力をとても強固に宿している傑作。
「永遠の拷問に閉じ込める」「結果は遅れてやって来る」
プロメテウスの引用に始まり、世界が核の傘に覆われていく緩慢な終わりに目を瞑った事実を突きつけて終わる抜け出せない構造。科学者としての矜持と罪悪感の二律背反。ドラマティックな劇伴に載せ、悉く力強い演出、メタファーも非常に捉えやすく、濃厚且つ堅固な3時間。個人的に昔色々調べていたのですんなり入ってきたことにも起因しているかも。
トリニティ実験の投下前シークエンスは掌に汗がどんどん滲んでくるのが分かるほどの緊張感。人類史における一つのシンギュラリティポイントの到来が秒読みであることがドラスティックに描写されている。
「広島や長崎の写真を載せるべきだ」との批判をよく見受けるが全くそうは思わない。ゴアとしての消費をされてしまう可能性を考えるとあのシーンだけでも意味性は担保できていると思う。それに、今のアメリカに贖罪をされても困るというか、それには意味が皆無で進歩も無いのでこれで良い。
自覚、矛盾、恐れ、皮肉、原爆批判、反戦精神、責任、その全てに満ち満ちている本作への現象的で短絡的で情動的で稚拙な批判/感想/誹謗中傷は大いなる軽蔑ないし侮蔑を送る。
正直、色々な感想、評論、批評を経てから書いているので固まるを超えて膨張してしまったので、この程度で収める。
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