まいこ

オッペンハイマーのまいこのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
本当に"面白い"と思って鑑賞できた?ノーラン監督だから興味を持ったし、『オッペンハイマー』をとりまく出来事の知見も深めることが出来たとは思うけれど、純粋な映画の面白さは彼の他作品と比べて薄かった。じゃあ、彼に期待されているのは何かと言われれば難解な場面転換から得られるカタルシスだろうが、さほど"時系列が弄られている"わけでもなし、伝記なのだから、そうであった必要性もないのではないか?
監督名がなければこれだけ豪華なメンバーで作品が作り上げられることは無かっただろうし、"日本人として"原爆について考えさせられることも無いだろうなとも感じた。自身の教育の敗北なので正直"日本人として"ってなんだろうな、とも思ったよ。

科学者の苦悩と世間との軋轢は他の作品で幾らでも擦ってるネタなのでスルー。ただ、『虐殺器官』でもあった(ような?)"ある思考"の拡大が最終的に人類の命を脅かす、のは本当に怖いし、無意識下で広がってるのかもしれない。
メッセージとして最高に強い俺ら・アメリカを信じてる層に対し自省を促すような感触で(届いてるかは知らん)、エンタメ性はゴランソン氏の劇伴と感情に基づく視覚/聴覚効果だけに留まる。ずーっと『TENET』の序盤のあの感じが続く。そして、辛うじてトリニティ実験まではIMAXの素晴らしさを体感できるはずだと信じて観続けていた。音速と光の届き方の違いがIMAXで体感できるのは楽しかったが、それ以降のおっさん同士の社会的地位の奪い合いは興味が無さすぎて爆睡した。3時間くらい爆発してもらった方がIMAXの元が取れるかもしれない。それにしても『博士の異常な愛情〜』の爆発シーンの方が個人的には衝撃的だったと思い返すなんて、自分でも驚いている。IMAXで撮影したホイテマ氏には申し訳ないが、あまりこだわりが無いのであればべスティアかドルビーで不安を永遠と煽られること間違い無しの音響特化の劇場で鑑賞するのが良いかもしれない。きのこ雲のファンでもなければ。また、原作を読んだ人たちはこの映像化対して、それとズレがなさそうで、1番この作品を楽しめたのは彼らなのではないでしょうか。

ゲイリー・オールドマンの特殊メイク凄すぎだし、全員等しく歳をとっていく姿にウォーリーを探せを思い出した。デイン・デハーンもジョシュ・ハートネットもめちゃくちゃ久しぶりに見たなあ。エミリー・ブラントとフローレンス・ピューはおふたりとも魅力的だった。てかパンフレットにあった【エミリー・ブラントとマット・デイモンは同じ建物に住んでる】ってちょっと面白いんだけど。キャスティングってそんな感じで決まります?wwwwそういえば全編通しでテレンス・マリックみを感じたのは嘘ではないようだ。

バーベンハイマー、アレなんだったんだろうな。そうでもしないとアメリカ国民に見向きもされない内容だったからノイズマーケティングを仕掛けたんだろうか。作中にも描写は少ないし、思い当たる場面もないから謎が深まるばかりですわ。にしてもアメリカ!ユダヤ系!バンザイ!伝記は1回観たら充分かも。赤狩りの歴史をもっと知るべきなんだろうな。次作まってま〜す。
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