「原爆の父」オッペンハイマーの「心理的な葛藤」を
照明、音楽といった映画的手法をフル活用して見事に表現している。
そしてクリストファー・ノーランらしくわざと時間軸を混乱させるような場面展開が「心理的な葛藤」の緊張感を加速させる。
オッペンハイマーは、自分の判断やパフォーマンスが「科学、技術、政治(学会、国内政治、その他のコミュニティ)、国際政治、世界史」に影響することも踏まえ、総合的な判断を強いられる。
その強烈な心理的な葛藤を主題に置いているのだから、
本作品の評価において議論の対象となっている、
広島・長崎への原爆投下のシーンが直接的には登場しないことについて
私には一定の納得感があった。
オッペンハイマーは言うまでもなく、
それ以外の学者や政治家の業績や人間性、
この時期の政治経済の状況については、
事前にインプットしておいた方が良いかもしれない。