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オッペンハイマーのコバのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

音がすごかった…音や振動が印象的に使われている映画でオッペンハイマーの心情とリンクしている部分がある
爆発音ももちろんだけどオッペンハイマーが自分のしたことの重さや罪を改めて自覚したシーン(終戦後の演説)で、群衆の足を踏み鳴らす音がブルブルが伝わってきて罪への恐怖みたいなのを再現していた
このシーンが一番葛藤が出ていたのと話的に印象に残った

久々に映画館に行ったけど、映画館で見て「体感する」っていうことの価値がかなり重視されて作られてる映画だなと

これは配信だけで見ちゃうと映画館と比べて物語自体の情報量の少なさがどうしてもあるので見に行くべし!!

よくある漫画の悪役科学者の葛藤を描いたみたいな印象
原爆を作るそもそもの理由は、世界で同時多発的に作られ始めたことで国同士の軍事力のバランスが崩れてしまうレベルの兵器だから持っておかねばという国の事情的な部分が大きい。作り始めた最初の理由が違うので「終戦のために絶対原爆が必要だった」訳ではないのが味噌

最初の理由はナチスに先を越されてはならない→ドイツ敗戦→それでも今後のアメリカの軍事力のためには作らねばならない→大義名分として日本に落とすことで終戦を促しつつ威力のデモンストレーションを行い、戦争の形を変える(抑止力)
と理由づけが微妙に変化して行く
つまりは日本は見せしめだったわけで、それに加担した(倫理的に問題が残っていたのに)というのがいかいに重いことなのか自覚し始めオッペンハイマーは苦悩する

やはりノーランはイギリス人だからなのかアメリカ人の主な主張の「戦争終結のため」という罪を背負ったヒーロー的なスタンスからは一歩引いて描いてるように感じた

確かに本土侵攻でボロボロになるまで日本は降伏しなかったと考える人間がいるのもそうだろうとは思うけど、実際はもはや日本はどん詰まっていたので原爆投下以外の手段はあったが爆弾の開発と戦況や他国の開発状況のタイミングが合ってしまっため投下されたと言える

世界の中でのアメリカの軍拡競争での優位性を示すのにちょうど良い場所と理由と爆弾があったからと言う
それで民間人、つまり女性と子どもがメインだろう…が大量に殺されたのだ

しかも二回落とした理由が適当すぎないか?もはや感覚が麻痺しているが…
当時の世界各国の軍トップが持つ人殺しに対する倫理観のおかしさなんてどの国も大差ないのも事実

結局のところ戦争は勝てば官軍負ければ賊軍
勝利側は自らの罪を「必要な行為だった」とし負けた側は戦争犯罪として裁かれる

大義名分がどうだろうとあまりにも罪深かった、世界を変えてしまったという自責の念
…みたいな話を描きつつ同時に、「浮気しすぎだろ!」という家族関係の人間ドラマ
それとストローズに対しての侮辱によって始まった断罪政治バトルみたいなドラマが同時進行で行われており映画として非常に見応えがあった

日本人だからこそある程度原爆の被害を描いた物語に触れてきているので爆発シーンに感じた気持ちの悪さや罪の意識、(オッペンハイマーに感情移入しつつ)、終戦直後のスピーチでは絶望感みたいなのがエグくて泣きそうになったけど
きっと国によって歴史教育は違うので観客の感想は細かい部分でかなり色々分かれるんだろうなっていう映画

映画としては最高レベル
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