いのうえ

オッペンハイマーのいのうえのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
やや遅ればせながら、TジョイPRINCE品川のIMAXにて。
本当はグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXで観たかったですが、チケット争奪戦が激しく断念。
ただ観終わってみると、品川のIMAXでも十分満足で、必ずしも池袋で見る必要もないかしらと思いました。

今年のアカデミー賞の台風の目であった本作、最終的に作品賞含む7部門受賞ということで、オスカーウォッチャーの私としてはやはり授賞式前に日本公開して欲しかったなという気持ちです。

本作を観賞して改めて思ったのは、キャスト陣の豪華さや、画としてのルックの格調の高さが半端なく、アカデミー作品賞を本気で取りにきている映画だなと思いました。
クリストファーノーラン最高傑作との呼び声高いのも納得ですし、私自身もそう思います。

ただその一方で、日本公開がアカデミー賞後の3/29と、アメリカ公開の2023年6月からかなり時間が空いたことに、やや政治的な思惑を感じてモヤる部分があります。

「原爆の父の伝記映画」という特性上、「原爆を落とされた」という当事者性を帯びている日本においてこの作品がどう受け止められるか・批評されるかは、作品の勢い・正当性を担保するうえで非常に重要だと思います。

にも関わらず(むしろそうであるからこそ?)、アカデミー賞前に日本公開せず、作品賞含む7冠を取った上でようやく日本公開というこの順番は、作品テーマに対して不誠実だなと思ってしまいます。

日本でなされるこの作品に対する議論や批判にきちんと応答した上で、賞レースに臨んで欲しかったです。
(まあ実際は全然違う理由で日本公開が遅れたのかもですが)

作品の外側部分についての思うところを長々と書いてしまいました。
作品の中身についての感想はざっと箇条書き的に記しておこうと思います。

・とにかくキャストが豪華
・とにかく画としてのルックが豪華で、映画の格調高さがすごい
・登場人物の多さと、もとの話の複雑さも相まって、一定の予備知識がないと話についていくのはなかなかに困難な印象。
(わたしは割と予習していったので理解できた方かしらと思いつつ、後半のストローズの策に若干ついていけず後から調べて納得したり・・・)
・音の演出が優れているなと思い、途中途中で挟まれる爆発みたいな抽象的な音は映画の緊張感保つ上で効果的だなぁと思ったり。
・原爆できてイェーイのような能天気な着地ではもちろんなく、強力な破壊兵器を生み出してしまったことの葛藤が描かれており、日本から見てもバランスが取れているように思いました。