ゆめたろう

オッペンハイマーのゆめたろうのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
藤永茂著「ロバート・オッペンハイマー/愚者としての科学者」を一読し鑑賞したために多数の登場人物や時代設定に難儀することはなかったが、前提知識がないとサッパリな作品なのは間違いない。

聴聞会(1954年)と公聴会(1959年)はモノクロとカラーで描き分けしながらも、年代を字幕などで特定せずに時間軸を行ったり来たりする。登場人物の立ち位置、問題とその背景が前提知識として備わっていないと楽しめない作品は何か偉そうなのが鼻につき、個人的に苦手なところ。今作も決して難解として理解できない自分を責めるのではなく、単なる説明不足(説明しない)な作品でいいと思う。

ドキドキのトリニティ実験のシーンはどう見ても核爆発に見えず肩を落としたが、スイッチを押すまでのカウントダウンに恐らく今年一番の緊張と恐怖を覚えた。

ところがどっこい、その後の民衆の歓喜を軍靴の音に被せる演出がなおさら恐い。アメリカ国民とナチスドイツを同義とするかのような強気な演出に「お前らも原爆開発の一旦を担ったんだぞ」と睨みをきかせる強気な眼差し。
オッピー個人に原爆の罪を被せてはまた同じ悲劇を繰り返してしまうよね。