世界を破壊しかねない兵器の製作という規模の大きさと、精神的に不安定なオッペンハイマーの感情の繊細さを見せつけられる。
量子力学の可能性が囁かれ始めた時代背景と数々の天才物理学者たちの存在とが相まって、マンハッタン計画の恐怖が際立つ。トリニティ実験の緊張感と爆発時の音の表現は物凄かった。
そして核兵器の恐ろしさはもちろんだが、それ以上にオッペンハイマーの感情の揺さぶりを捉えた映画。
製作の段階に誰よりも立ち合い、誰よりも詳しい一物理学者が政治行動に片足を突っ込み個人的な罪悪感に繋がることは、至極当たり前のことだと思う。
赤狩りの中共産主義者と多く関わってたことでスパイと疑われたり不利な聴聞会を仕向けられたりとオッペンハイマーの同情を誘う描写が多くあるが、日本人として彼を被害者と庇うことは複雑。
ドイツ降伏後に目的を失いかけた原爆についての話し合いで、「日本」という言葉が出てきた時にはさすがにゾッとする感覚を覚えた。
「好き」とまではいかないが、興味深いシーンがたくさん。
被外国の人間だからこそ感じることも多いし、いまの時代に観れてよかった。
キャストまじで全員素晴らしい。
クリストファーノーランの一つの集大成を観た気分。
