このレビューはネタバレを含みます
各シーンを切り取れば、うまい描写が多かったと思う。しかし全体を通した時に、いまいち主題が定まらないバラバラな印象を受けた。
「東京大空襲で民間人が10万人も死んだのにデモひとつ起きないアメリカが心配だ」などのセリフが無理やり入れられているので反戦映画かと思いきや、全体を通すとそうでもない。
オッペンハイマーのキャラ設定もブレていて、あんなサイコパス野郎が開発を後悔するだろうか。しかも悲惨な映像を見る前に、死者の数字だけで。科学は「誰が最初に発明・発見するか」であって、自分が作らなくても誰か(おそらくソ連)が作ることはよくわかっているはずだ。
時系列が公聴会と聴聞会と開発以前と他にいくつかあって、一つだけ白黒になっていたがあまり意味はなかった。白黒に頼らずともわかりやすい時系列を作れないものか。時系列をいじらなくとも面白い映画を作れないものか。アインシュタインとかストローズとか、正直いらなかったのではなかろうか。
トリニティ実験については、レバノンのベイルート港爆発事故の動画を是非見てほしい。実際は映画の何倍も怖い。
クリストファー・ノーラン監督は相対性理論とかが好きな割に理系の素養がなさすぎて、ディテールの違和感が気になって没入できなくなることがよくある。量子力学の授業で数式ではなく夢を語ったり、「私、○○大の化学専攻なのにタイプライターやれって言われたんです」「なら彼の研究グループに入れ」みたいな。いや大学出ただけなんて役に立たんよ。