あーち

オッペンハイマーのあーちのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
最初はただ物理を傾倒して愛する男だったはずのオッペンハイマーが、原子爆弾という兵器を作るまでに至る流れと、オッペンハイマーの葛藤が描かれている。私が1番印象に残っているのは、彼の原爆が遂に投下目前となったときの最終実験のシーン。爆発音がなく、彼の荒い呼吸だけが劇場内に流れた。あの呼吸は彼の実験の成功を喜ぶ感嘆の息なのか、恐ろしいものを作ってしまった自分への焦りの呼吸なのか、どちらにも捉えることができた。
原爆がついに落とされたあと、オッペンハイマーの罪悪感が彼の自覚以上に膨れ上がっていたことが、原爆の凄まじい閃光や被害を受けた人の爛れた肌の幻覚を見ているという描写で描かれる。アメリカからしたら彼は英雄かもしれないが何十万人もの日本人の命を奪ったことは紛れもない事実である。全く逆の評価に板挟みにされ、なおかつ「原爆を作った男」として後ろ指を指されることに恐れる彼自身の弱さを見られた。
話のあらすじがわかった上で、ストーリーラインや彼の心情を深読みするためにもう一度鑑賞したいと思える作品であった。
あーち

あーち