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オッペンハイマーのolnのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
帰結:素晴らしいが、驚きに欠ける
ジャンル:ミクロとマクロのメタ認知

なんだか偉そうな言い回しになってしまいますが、本作は鑑賞時点で、鑑賞者がどういったステージに立っているのかによって、評価が変わる作品だと感じます。ステージがどうだから、良いとか悪いということを言いたいわけではなく、先んじて視点を獲得している人には、視覚や音響もしくは、構成は良かったと思わせる程度の所感になり、視点をこれから獲得していく人には、ハンマーセッションの役割を担うであろう作品に思えます。私自身がどの程度、本作を真に理解したのかは不明ですが、前者寄りの鑑賞体験を得ました。

例えば、”アステロイド・シティ”で描かれた舞台だとか、オッペンハイマーを取り巻く世間が如何様だったかとか、当時のアメリカ人視点ではそういう思考になるのかとか、気づきを得られるファクターは多々ありましたが、いかんせん長尺の上映時間に対して、題材が地味めかつ情報量が多いという、凡人の脳をオーバーフローさせるような内容。更には、育った地域柄、オッペンハイマーの実験が成功したからといって、手放しで「良かったね」とは思えない思考がプリインストールされているため、割り切ったつもりで鑑賞に臨んだ割には、微妙な感情に陥りました。

自分自身の感情のことも含め、人間の感情や思考ってコントロールが難しいよねという実体験を得たということが、本作の教訓でしょう。ラストに明かされる、現代人への問いかけとも取れるオッペンハイマーの発言は、現在の世界情勢を頭の端に浮かべることで、より深さを増すように感じます。
ノーラン版“君たちはどう生きるか“



余談
映画そのものは言わずもがな、パンフの情報量もエグい。
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