日本では公開されない(できない)かもしれないと言われていたから、公開が決まって必ず劇場で観ようと決めていた。
予備知識がないと難しいと聞いていたので、ネタバレなしの「観る前に知っておくべき情報」を読んで、いざ参らん!
まず、史実に基づいている実在した人物たちを扱っている作品であることとか、自分が日本人であることとかを取っ払って、純粋に「映画は娯楽・エンターテイメント」として観たら、3時間もあるのに全然飽きずに観られる超大作でした。
ロバートダウニーJrを憎み、オッペンハイマーに味方し、ラミマレックの登場に喜び、妻が握手を拒んだことにほくそ笑んだ。
でもね、やっぱり私日本人なんです。
祖父は戦地で隊長として戦い、敗戦後は何日も飲まず食わずで隠れ、その間にどんどん隊員たちは亡くなっていき、たまたま生きて帰れた人なんです。
共に戦った同志や隊員たちの分まで生き、妻や子供たちには戦時中の話をほとんど聞かせず、人生の最晩年になってようやく孫の私と私の夫に少しだけ当時の様子を聞かせてくれたんです。
戦地に赴く前に撮った写真の軍服姿の祖父はとても凛々しくかっこよくて誇らしかった。
でも、祖父にしてみたら「よくもおめおめと帰ってこられたな」とまわり中から思われていると思って生きてきたのでしょう。
写真も私たちに話す時までずっと誰にも見せずにいたようです。
そして数年前に97歳の誕生日の少し前に亡くなりました。
私にとっては、いつも明るく冗談を言うのが好きで、入院しても看護師さんをナンパしたり笑わせたりする楽しい祖父でした。
でもきっと心の中にはたくさんの辛さや悲しみや後悔やトラウマがあったんだろうと思います。
そんな祖父は戦争に巻き込まれたたくさんの人たちのうちのひとりに過ぎません。
亡くなった人、行方不明の人、後遺症の残った人、大切な人を亡くした人、住む家を街を、通う学校を勤務先を無くした人。
たくさんのたくさんの人たちが被害を受けたのです。
だから、単なる娯楽としてだけは受け止められない。
物理学者たちにとって、どんな使われ方をするかは関係ないのでしょう。
できなかったことをできるようにした喜びが大きかったのでしょう。
でも「結果」を知っていることの「過程」を観せられている間、私の心臓はばくばくしっぱなしで、彼らの才能と努力を集結したロスアラモスでの実験のシーンは、成功するとわかっていても「失敗しろ、失敗してくれ!」と祈ってしまいました。
そして成功に歓喜する人たちを観て涙が込み上げ体の震えが止まらなくなりました。
「お願いだから、こんなことを喜ばないで」と。
次に思ったことは、「もしもタイムマシンができて私が使えることになったら、これより前に行って止めなくちゃ!」でした。
抑止力のためにだって、あんなもの必要ないよ。
原爆なしの冷戦でいいじゃん、揉めるんなら。
人を殺したいなんて微塵も思っていない人まで殺人者にするような武力を使った争いなんて、本当に文明の発達した現代に高い知能をもった人間たちのすることなのかな?
自分たちで自分たちを滅ぼすようなものを作る人間は他の生き物たちからばかにされても仕方がないよ。
それなのに生物界のヒエラルキーの頂点にいるような勘違いを続けるのは本当に裸の王様のようで恥ずかしい。
他の生き物たちにも、未来の人たちにも恥ずかしい。
ラミマレックと奥さんはとにかくかっこよかった。
これから観る予定の方へ
心身に余裕のある時に観たほうがいいです。
私はお昼を跨ぐ回だったので始まる前におにぎり2つ🍙🍙食べてから観ましたが、終わるとすでに腹ペコでした😅
学生時代の夏の体育の水泳授業の後のようにぐったりです。
私が入り込み過ぎたかもしれませんが、楽しい内容ではないし、とにかく重いです。
仕事帰りなどではなく、お休みの日の明るい時間帯をおすすめします。