このレビューはネタバレを含みます
『インターステラー』の対になる映画。『インターステラー』は物理学が地球を救う話だけど、本作は物理学が地球を滅ぼす力を作ってしまうという話。また、インターステラーはSFだけど本作は史実である点も対になっている。
実際の物理学者を監修につけて『インターステラー』を撮ったクリストファー・ノーラン的には避けて通れない題材だったんだろうな。まあ『テネット』も物理学的な話だったし、物理学を積極的に映画に取り入れるなかでその罪の部分に興味を持ったのだと思う。
オッペンハイマーを英雄にも悪人にも撮らず、かといって個人のドラマに終始するのではなく科学が使い方によって世界を滅ぼす力を持つことを力強く警鐘する。かなりしっかり目に日本への原爆が不要な投下だったことを描写しているし、「科学がどう使われるかは止められないから～」と述べるオッペンハイマーに対して、署名運動に参加しなかった事実やテラーとの会話を見せることでその主張を否定する。
原爆誕生だけでなく、ストローズとの対立・赤狩りも描きアメリカの負の部分を様々な視点から見つめる。
俺はかなり誠実に原爆と、何にでも敵を作りたがるアメリカの罪に向き合ってる映画だと思ったけどなあ。まあ原住民の土地を実験場に使ったことの罪はもっとちゃんと描写されるべきだったんじゃないかなとは思うけどね。
ここ最近フリー素材のようにヒトラー・ナチスを悪役にした映画が撮られてきたなあと思うのだけど、まさに対ヒトラーのためのマンハッタン計画を題材にしたこの映画はそれを肯定的に描くことなく、むしろ対ヒトラーを口実に世界を滅ぼす力を作り上げようとしたアメリカを冷静に批判しているように思う。なかなか見ごたえのある映画だった。
まあ…終始音楽かけっぱなしの演出はどうなのよと思うけど、嫌いじゃないしいいかな。時系列も結構交錯するけど、『テネット』みたいに混乱することはないと思う。アーロン・ソーキン脚本の映画のほうが入り乱れてるでしょ。
何なら白黒の映像を使って時代の違いを描写するなんて分かりやすすぎて芸がない気もする笑
アメリカではオッペンハイマー大ヒットしたんでしょ？これ見てアメリカのネット民はバーベンハイマーの画像作ってたの？頭大丈夫？？？
