トランティニャン

オッペンハイマーのトランティニャンのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
通常サイズ、IMAXレーザーGTの2回観た。
想像以上に断罪と贖罪に満ちた内容だった。3時間の物語の分配にこそメッセージがある。時間との向き合いをやり尽くした『TENET』を経たので油断してたけど、冒頭から凄い勢いで時間を駆ける。かつ語りが早い。ルドウィグ・ゴランソンのスコアは時間の接着剤で惑わせる。この速度で3時間行くならあっという間だなとも思わせるが、終盤は脳がオーバーヒートする。
トリニティ実験が終わった瞬間、画面に映る歓喜と今を生きる我々のトーンは明らかに分離され、そしてオッペンハイマー自身も疎外されていく。日本でここまで公開されなかった理由も場面によって理解できなくはないが、それでもなお観るべき。

「赤狩り」がここまで大きなテーマだったことも想定外だった。ダウニーJr.のシークエンスと3時間の上映時間を思うと考えものだが、ダークなプロジェクトXに終わる所にミステリーが加わり、天才科学者を取り巻く毀誉褒貶、政治と科学のメカニズムが一層露わになったと思う。

初回は情報量に振り落とされないよう必死に観ていたが、2回目は言うまでもなく登場人物や筋書きのディテールも味わえた。慣れてしまうと、やはり赤狩りパートの長さに疲労を覚えたかな(疲れていたのもある)。特にケイシー・アフレック必要だったかな、気持ち悪いし(笑)とか、要素過多は過多。

ノーランがこの映画に賭したものが、目指している次元が違い過ぎて、未だ残したいことを処理できずにいる。