ゴリラリラ

オッペンハイマーのゴリラリラのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
満を持して
体調を整え、精神面もクリアーな状態で
よーし観てやるぞ(^^)

いやぁ、コナン旋風に押されIMAX上映が終わっちゃうんじゃないかとヒヤヒヤ
何とか鑑賞出来ました。

被爆と被曝
合わさった苦しみが広島、長崎だ。
その痛み、辛さがどれだけ描かれているのであろうか?
日本人はこの部分に強い関心があった。

そしていったいアメリカでの観客はどんな反応をしたのか知りたいと思った。
もう80年も過ぎようとしているし、
原爆って何?そんなの知らない?
そんな若い世代が蔓延している(かもしれない)ことに恐ろしさを覚えているので。

トリニティ実験-
成功に湧く人々
ボタンを押すまでの1秒1秒はたまらなくドキドキさせられた。
IMAXでの迫力、爆発シーンは圧巻。音が煽る。

ナチスが降伏したら残りは日本。忘れてはならない3月10日一夜にして10万人とも言われる死者を出した東京大空襲は台詞で採り上げられたが、3か月に及んだ沖縄戦の激しい抵抗、硫黄島の執念の防御などの描写でもって、玉砕覚悟の日本兵、最期まで絶対に諦めない忍耐強い日本国民は怖かったろう、恐ろしかったであろうことをもっと知らしめてほしかった。
これから先、本土に上陸したらいったい自分たち仲間の兵士は何人殺されるのだろうか?
それには早い段階で降伏させなければいけないという大義名分のために。

勝ったぞ!!
大はしゃぎだ!?
だがハイマーの苦悩が始まる。

原爆のおかげで戦争を終わらせたんだ、平和を取り戻せたんだという論理、アメリカ目線は仕方ない。
だがしかし、市民を巻き込んで原爆を使ったという事実は決して忘れてはならない。やられた側の痛み、苦しみ、辛さをしっかり教えていかない限り核使用を肯定させてはならない。

そういう意味ではこの作品を世に出したこと自体、たいへん評価できると思う。

きっと今の米国人も凄まじく酷いことしてしまったということを感じてくれたであろう。
これをきっかけに若者が関心を持って「核」について考えてもらえれば現時点では成功ではないか?
80年くらいのサイクルで次の世代に語り継いでいかないと、また同じ過ちを繰り返す。結局人間って本能的に少しでも優位に立とうと争いごとをやめないから。

米大統領は平和記念公園での献花の際にも核のフットボールを持ち込んでいる。「核なき世界の実現」は理想ではあっても
現実はこうである。
無念ではあるが、様々な考えを持つ人種で構成されている以上、「核での威嚇」でこの世界は成り立っている。
だから使用だけは絶対に阻止しなければならないのだ!

とまぁ、以上が前半の感想(^^)

特に後半部分「赤狩り」がアカデミー会員にはたまらなかったのでしょう、この作品は。

キティ奥様の
何で抗議しないの!握手なんかして!
という姿勢が受けたのでしょうね。
チャップリンの国外追放が有名でもあるが、ハリウッドにとっても忘れられない辛く苦しい時期だったわけで、抗議しなかったことに対する罪深さは根底にずっとあっただろうから絶賛されるのも無理はない。

時代に翻弄されたハイマー
ノーベル賞もののブラックホールの論文発表よりもナチスのポーランド侵攻が一面のトップを飾る当時の状況
今になってはじめて冷静に彼の功績を見直せることが出来ました。

自分自身も鑑賞後しばらくの間、あらためて色々と考えるきっかけを与えてくれた貴重な180分。

一粒で二度美味しい、なんて言っては不謹慎かも知れないが、2本立ての前編後編に相当するような見応えたっぷりな凄い超大作でした。

ここまで言っといて何で評価は4.8なの?
それは、私が日本人だから…