クリストファーノーランはとにかくびっくり箱を見せる事に全力を注ぐ人という印象で、その分毎回人間ドラマを描くと、とことん上手くいかない、というか割と蔑ろにするという自分なりの結論を出している。
その際たるものがプレステージであれがノーランの全てを物語っている、見せたがりドヤ顔おじさん。唯一キャラクターとして魅力を見せたダークナイトだがあれはヒースレジャーの怪演によって生まれたモンスターなので実質ノーランの手腕という印象はない。
そんな彼が今回ドラマを描くという事ですごく興味があったんだけど、結果としては凄くノーラン映画だった。
登場人物達が怒涛のように現れ喋るたび交互に見せ続ける顔面アップのカット割、そしてどんどんさっていく、おじさま方のアップを3時間見せられ続けるというとても疲れる内容。というか途中ちょっと酔ってしまった。顔酔い。笑
オッピーはとても繊細且つ独善的、家庭にはキッチンが必要という事すら気づかないような自身の興味ある部分以外は手を付けようとしない、というかあまり理解しようともしない。
そんな彼が被爆後の人々の生活や被害状況、世界をひっくり返す実験の成功から生まれる新世界を想像する人なのか、うん、全然そんな事はないよね。灰になるくらいの想像をして何となく自己嫌悪しておしまい。これがまたアメリカの国民性である事を凄く突きつけられたようで悲しくもある。まあこの映画の役割が違う部分にあるのは十分承知での感想ではあるが、アメリカぽいなとは思った。
特にノーラン監督らしいと感じたのはキャラクターを描くにしてもやっぱりナルシストなんだなて所。
このナルシスティックなキャラクターはノーラン監督そのものと考えてしまうけど、そうだとしたらいつも感じる鼻につく所は自身も理解しているて事なのだろうか。面倒ごとを押し付ける弟も登場するし。
そういう意味ではどう見られているかよく理解してる客観視点もしっかり持ってる作家なんだなと気付かされた。
体験型作家としてやはり核実験シーンまでの見せ方は凄く巧みで時間の使い方がすごく上手い。格時間を使い分けここで一気に盛り上げる作りは流石だなあと。映画館で観ないと伝わらない、劇場価値を上げる作家という部分も大きくリスペクト。
個人的にオッピーが聴聞会で詰められセックスの幻視を見せるシーンが一番好き。
結論としてはあまり新しい映画という感じでは全然なくて、監督らしいいつもの感じでした。今までと毛色の違う作品のようでノーランファンは存分に楽しめる映画なのでは。