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オッペンハイマーのOKkynのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
クリントイーストウッド的アメリカの正義感じゃなく原爆を描く映画がようやくでてきたんだなということが感慨深かった。

この映画でも描かれていたようにヒトラーをゆるしたドイツって、政治とか裁判とかは別に、文学とか映画とかアートとかを含む人々のムーブメントとして、その後の自己反省,自己批判というのを戦後にやってきた(より戻しがあるにせよ)し、そういうものを私たちもたくさんふれてきた。日本のそれは不十分だったなあとも感じるし、戦勝国のアメリカなんて、罪の意識すらそれが表に上がることなんてなかった。

このオッペンハイマーをみて、わたしたち原爆をおとされた日本人は、ロスアラモスにおける実験、トリニティーに成功したとき、そして広島に原爆が落とされた、彼らの大金を投じて行なったプロジェクトが成功した、そしてその成功にオッペンハイマーが挨拶?したときの、科学者たちの喜びに、もちろん賛同できない。

けれど、これを見たアメリカ人はどう思うんだろう? わーって喜ぶ人ももちろんいるだろうけど、オッペンハイマーのように、なんてことをしてしまったのか、と思う人もいるかもしれない。どっちなんだろう。
とにかく、自己弁明じゃない表現がうけいれられ、評価され、アカデミーであれだけの賞を取った功績?って大きいんじゃないかなーと思う。


音が怖かった。ノーラン的な不安感、それが原爆とマッチしてた。

話が原爆開発だけにとどまらず、その後の水爆開発、赤がり、オッペンハイマーのスパイ疑惑、その疑惑をたきつけた政治家への裁判など、いろんな時間軸とトピックスがいりまじっていたから、話としてはめちゃわかりにくかった。

けれど、あーこのときのこの人の判断が、わたしたちの国の戦争につながってるんだっていうある種の接続感とともにみた、そして、なんだろうその後の米ソの冷戦とか、あとは「博士の異常な愛情」につながるあほな政治家たちの独善的判断ってこのころからあったんだなと思ったらふたたび「博士の異常な愛情」が見たくなった。やっぱり、あのおかしな核戦争をあんなブラックユーモアとともに描けるキューブリックは天才だなと思いつつ。
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