「一度知ったら二度とその世界には戻れない。」
ほぼ一人称の視点で描かれ、彼の内側の世界までも没入させられる、オッペンハイマー体験ムービー。
当時の時代背景や登場人物などの説明はほぼ無いに等しいので予習必須。
3時間越えの上映時間。複雑で難解な物語という事で、人におすすめしづらい。
ただノーラン映画特有の時間軸が入り乱れるストーリー展開に、激しく感情を揺さぶられる映像表現と音声。そして脇を固める歴代最高のオールスターキャスト。個人的には大満足でした。
過去に行った行動への遅れてやってくる結果。欲求とモラル。作る人間と使う人間。
地球を壊しかねない悪魔のような兵器を作った人間は、特殊でも異常でもない。
ただの物理学マニアの典型的な理系男が時代や人種、取り巻く環境、さまざまな要因に導かれ、自身の好奇心に負けた結果、さまざまな人間の罪を背負い生きていく。
核兵器を生み出してしまった人物の罪を思い出すのではなく、もう戻れなくなってしまった核のある世界でどう核と向き合うのか。
地球温暖化における異常気象やコロナ、情報が溢れる昨今の世界において、今一度この核兵器という大量破壊兵器への意識が稀薄になってはいけないし、我々一人一人もこの世界の当事者として、考えていけない。そんな事を感じさせられた。
あの核実験のシーンの緊張感と恐怖感。
おかげで脳みそにこびりついて離れない。
緻密なストーリーと圧倒的な映像という一級のエンタメ作品という中に潜む、ノーラン監督の強烈なメッセージを感じさせられました。次作も期待しています。
