あいのべる

オッペンハイマーのあいのべるのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞日 2024/3/30

理論物理の世界に夢を抱き、その栄誉を手にする上で犠牲となるものに、それらしいような言い訳をつけてしまうこと。頭ではそう結論付けていても、心は正直にそのジレンマを抱えたまま。ただ、その事実に苦しむばかり。
とても残酷な話だと思った。国、社会、周りの人々の影響で、オッペンハイマーは倫理的な正解を見出だし切れないまま、後悔を抱えてしまうことになったのだ。

彼は弱気になってしまったのだろうか?否。
栄誉を手にしたあとに残る、良心の呵責。いっそのこと人間性を捨て去って合理化してしてしまうなら、何も心残りとして感じる必要はない。過ちを認め、その人間性を守ることに決めたオッペンハイマーに、僕は敬意を抱いていたいと思う。

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・作品に対する振り返り
→やはり個人的に印象に残った場面は、原爆投下後にロスアラモスの公衆の面前に立つシーン。靴音、「オッピー!」という声援。あらゆる音の刺激が彼を襲うなか、トリニティ実験の場面を当てはめるかのように、オッペンハイマーの視点から音が消える。閃光がその公衆たちを、襲う。
どういった思いがあったのか。複雑な心境に感情移入し、涙を溢れさせるしかなかった。あのシーンの表現は見る側にとっても強烈に、記憶に残るシーンであった。
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