nami

オッペンハイマーのnamiのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ネタバレを恐れて事前情報はあらすじや予告程度に止めておいたけれど、人物関係や政治背景など、もう少し知ってから観た方が良かったかもしれない。

映画の途中までは、原子爆弾の創造主であるオッペンハイマーが良心の呵責に苦しむ話だとばかり思っていた。
勿論それは合っているのだが、彼の孤独な戦いは戦争が終わっても尚続き、苦楽を共にした同志や愛する祖国によって異端審問にかけられることとなったのだ。
しかし“世界の破壊者”は、決して彼一人だけではないはずだ。

ある意味ではホラーやスプラッタよりも遥かに恐ろしい、唯一無二の作品だと感じた。
絶えず響く重い鼓動のような音に、切迫感や不安感といった感情を掻き立てられる。
心臓の弱い人は観ない方がいいかもしれない。

戦争中とは言え、爆弾が多くの人の命を奪ったにも関わらず、笑顔で大喜びする人々の姿は一種異様に映った。
オッペンハイマーだけが、唯一人間であるかのように見えた。

繊細で優しく、才能に溢れた彼が本当に創りたかったものは兵器などではなかったはずだ。
痛ましく重い、しかし決して目を背けられない180分間だった。
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