Nori

オッペンハイマーのNoriのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.7
当方ノーラン監督初心者。週末の朝イチの映画館に向かうも満席で入れず。映画を諦められずに、同じクリストファーノーラン監督のフォロイングを同日に鑑賞。これがオッペンハイマー前に良かった。

オッペンハイマーは登場人物も多く、時間軸も前後する。フォロイングもそんな感じ。ダンケルクとかも出てくる人たちの背景や特徴を明確にさせないが、最後はなんとなくわかった気にさせてくれた。そういう作り手ということが事前にわかったので、オッペンハイマーに出てくる多様な人々はさほど気にならずに済んだ。あぁこの監督は多角的に人の目と言葉を引用し、前後した時系列を使用することで、ことの本質を表現するのかと。そういう見方で鑑賞するのが良いのねというところからスタートできた。

話に関しては日本人だからか、やはり最後の爆発は恐怖でしかなかったけど、監督の手腕というか、実験までで一つ山場を迎えてからの、オッペンハイマーの人間としての葛藤にシフトするところは良かった。それだけ人を殺したのであればそれは悩まずにはいられなかっただろうと思うし、天才科学者の人間の面を描く立派な自伝映画だという感想。

結末に向けて不穏な空気感がパンパンに張り詰めるのがたまらないし、アメリカという国の強さを確固たるものとした、政治力や統制力、結果に対しての実行力を感じた。関わる人間のあざとさや、狡猾さも原爆の爆発を予見させ、貯められたビー玉のように緊張感が増していく。
だがその反面、原爆の開発当人であるオッペンハイマー本人は政治などに関心を持たず、科学者として、父親として、夫として、人間らしく悩みながら生きていた人が描かれたことが救いとなる美しい映画でした。
Nori

Nori