えみ

オッペンハイマーのえみのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

• 音響のいい映画館でみるべき!
事前に第二次世界大戦前後の歴史をおさらいしていったのでついていけた...はず。ユダヤ人に対する迫害や差別とそこに生まれる感情の生々しさを感じた。

• 伝記的な要素、科学者や破壊者としての苦しみ、ストローズをめぐる社会派ドラマの3つの要素が重なりあって、3時間興味を失わずにみれた。おもしろいと手放しに言いたくはないけど個人的な趣味嗜好を超えて人に勧められる映画。

• 蔵書にフロイト(性的抑圧が精神障害につながる)→冒頭の病んだオッペンハイマーとその後の奔放な女性関係、ピカソの絵(青の時代のモチーフをキュビズムで表現し直したものだと思う)→ 時代の破壊者のオッペンハイマーと絶望 とか演出意図がみちみちに詰め込まれていた。

• 原爆投下の対象エリアについての淡々とした会話の中で京都は新婚旅行で行ったよと軽口をたたくシーン、広島への原爆投下後にオッペンハイマーが大拍手で迎えられるシーンなど不愉快な場面も多々あってこれを日本で上映してるのも今自分が見てること自体もなんだかなと。
特に後者のオッペンハイマーの頭の中で大歓声が悲鳴に変わっていく場面はグロテスクだった。
私は戦後教育がそこそこされている世代で広島や長崎についての本や映像に触れる機会もあったけど、オッペンハイマーの名前も知らなかったし投下した大統領の名前もあやふやだし、劇中のストローズいうところのまさに偽りの罪悪感かもなと思った。

• これどう締めるんだろと考えてたら、ストローズの人間的で幼稚な復讐心に対して、オッペンハイマーが抱えていた神の視点に近しい絶望が対比的に提示されるというラストだった。構成がかっこいい。

• アインシュタインとの話の中で「Near zero」の破壊をしてしまったと作中の原爆の危険性の話と絡めていたけど、原爆の存在時代がより強力な破壊の連鎖を招くのはちょっと想像すれば簡単に辿り着く結果のはずで、冒頭の理論だけでは物理学はできない的な発言もここに繋がっているかも。
えみ

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