あけぼん

オッペンハイマーのあけぼんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
第96回アカデミー賞作品賞
広島県民として観ねばならんと思ってました。

広島から東京へ就職した時の話。
入社して同期という存在が出てくるわけです。その同期の1人が私のことをよく弄ってくるわけです。学歴から人間性まで。弄りとして捉えていたので別段何か思うこともなかったのだが弄りのラインを余裕で超える発言をしてきた。
「広島県民はみんな被爆しとるけぇの!」
耳を疑った。これまでの人生、原爆で弄る人間を初めて目の当たりにした。唖然として言葉が出てこなかった。広島を一歩でたらこんな人間がおるんかと。平和教育は広島だけしかしてないのか。
社会人一年目。初めてショックを受けたのを覚えております。

さて本作は原爆の父であるオッピーの歴史。正直難解っちゃ難解。人の名前と顔が一致しないままにストーリーがあっちいったりこっちいったりするので。とはいえ時の魔術師ノーランは今回の時間飛ばしは控えめ。まぁそこが中心ではないからね。
特筆するべきはやはり原爆実験。県民としてどう観ればええんや。大変複雑な感情にさせられる。爆発と噴煙。圧倒的な殺傷能力。神の力に喩えられていたがまさにその通りすぎるほど。人間が触れてはいけない禁忌に足を踏み込んだ印象を受ける。そこからオッピーの苦悩、実験の強烈な光が頭をフラッシュバックする。

確かにセンシティブで日本での上映が憚られたというのは分かるが過ちを繰り返さないためにも日本のみならず他の国々でも観るべき作品であろう。
あけぼん

あけぼん