Null

オッペンハイマーのNullのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

時代を先行した天才量子物理学者オッペンハイマーが、時代の力の中で、いかに原爆を作るに至り、舞台から退場するまでを描いた原爆ヒストリードラマ。


オッペンハイマーとストローズ
それぞれの公聴会を並行して
過去に遡っていく。

結果が確定している中で、
どうやって観客を引き込むのかは
とても難しい挑戦だったのではと。
長い作品だったけどいつのまにか3時間、
面白かった。


公開当初、原爆礼賛映画と批判する声が
あった気がするけど、
そんな映画ではなかったと思う。
確かに実験を喜ぶ姿を拡大解釈すれば
そうなるかもしれないが、
どう見ても理論を実験で証明したことの、
2年間の苦労が報われたことの、
達成感だった。
そうして人々の熱狂の過熱(足踏み音)に悩むオッペンハイマー。
長崎への反省、
個人の哲学と政治的思惑、
科学者としての限界と責任、
苦悩に溢れた映画だった。
バーベンハイマーをはじめ、アメリカ含め、
世界中で議論が巻き起こることが重要。



ファシズムと
その極地ナチスの台頭による世界的な恐怖、
第一次大戦を経て生き方を模索していた世界は、
vs共産主義から米ソ軍拡競争へと向かう。
急速に人々の視野が拡大した動乱時代の中で、
視点と視座もまた目まぐるしく移り変わる。
時代がそれを要求するも、
世界は追いつかない。
きっと今現在も同じ。

色んな人間が
それぞれの立場で時代の流れの中で
もがく様が描かれる。
誰1人、間違いだったわけではない。
後悔は先に立たない。
ただそこに、散っていく人がいる。
残された人間が何を学ぶか。
第二次大戦から3/4世紀が経過した今、
この映画が世に出されたことは
意義深いと思うし、
これから先も、何十年かおきに
こうした映画が出てこなければ
また惨劇が起きる気がする。



本作では、ストローズが観衆のカタルシスの矛先として立てられていたように思えた。
ノンフィクションが原作にあるようだけど、
実際どうだったのかな?
(JFケネディの暗殺にストローズ一派が関与してる可能性を仄めかす感じあったよね?)

そうして、ストローズを退場させることに
成功しつつも、
そこにはオッペンハイマーの舞台はもうない。
アインシュタインとの会話、
退場させるための手段としての賞賛。
なんて大人な映画だこと。
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