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オッペンハイマーのUのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

改めてクリストファーノーランは凄いなぁって思った映画だった。

彼の今までの映画といえば、インセプションやTENETなど時系列を入れ替えたりする複雑な脚本や派手なアクション、爆発シーンが派手なSF超大作のイメージだったが本作は史実を基にした、しかもセンシティブな題材で彼の表現力の高さを改めて思い知らされた。

冒頭から原子の世界という見えないミクロの世界をよくある抽象的CGは一切使わずに表現していてリアルで撮る事にこだわっているノーランらしいなと思ったし、
ノーランにとっても新しい表現の挑戦だったのかなと勝手に思った。
原子を波や光の粒に例えた抽象的な映像はおそらく実写で撮っているであろうが、何をどのように撮ったのか全く検討がつかなかったので知りたいなと思っている。

オッペンハイマーがアメリカで初めて教授になってから彼の講義に魅せられてどんどん生徒が多くなってゆく描写は彼の周りを回転しながらたぶん人物シャッターか何かで(今度見た時確認したい…!)同じ回転する動きの中で人物が増えていって良い表現だと思った。

あと、秘密保持の聞き取り調査を受けているシーンで元検事に妻がいる前でオッペンハイマーの過去の女性関係を質問されるところのオッペンハイマーと徐々に妻からは浮気相手が妻を見ている描写は本当に妻からはそう見えているのかなと思わせられた。
この時とエミリーブラントとフローレンスピューの表情の演技にも魅せられた。

あと、被写界深度の選択も絶妙だと思った。オッペンハイマーと複数の人々が対峙するシーンでは話しているメインの人だけでなく後ろで見ている大勢の人までギリギリ認識できるくらいまでぼやかしすぎずに見せていて、彼が敵が多いと感じていることまで表現していたと思う。
一方でオッペンハイマーが自己批判的になって自分の中で考え込んでいるシーンは深度が浅く周りがぼやけていた。

また、フローレンスピューとのベットシーンでインドの破壊神ビシュヌ神の文章を読み上げるシーンでは彼の全てを破壊するものを作ってしまっているという深層心理を巧みにセリフで表現していると思った。

また、画的な表現だけでなく、ブラックユーモアを含んだ台詞回しもあり、センシティブな題材の映画の中に少しの緊張が解ける瞬間があって固くなりすぎずにみることができた。

英語タイトル&エンドクレジットのフォントめっちゃ良かった。シンプルかつ洗練されていてかっこいい。

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撮影監督
ホイテ・ヴァン・ホイテマ

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●メモ
今まで存在しなかったIMAXカメラに適した本作専用のコダック65mmモノクロ・フィルム開発した

IMAX 65ミリと 65ミリ・ラージフォーマット・フィルムカメラとを組み合わせた、最高解像度の撮影を実践。また、本作のためだけに開発された65ミリカメラ用モノクロフィルムを用い、史上初となるIMAXモノクロ・アナログ撮影を実現。
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