あざとさ

オッペンハイマーのあざとさのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ノーラン監督らしい構成と観せ方。
この作品が日本で公開されていなかった可能性も考えると、配給会社さんには「よくやった!」と言いたい。
映画としてとてもよくできているのでオスカー総なめも納得。
IMAXカメラもめちゃ使っていて、エンタメに振った作品でなくても大画面の意義を十分に感じられた。

登場人物それぞれの思想や立場を熟考するに耐える組み立てだし、これまで"考察が捗るSF &映像表現"として確立してきたスタイルから主語を「科学と人間倫理」にそのまま置き換えた作品なんだな。という印象。
正解を明示せず、観客の思考を促すという意味でいえばこれ程までにハマる題材はない。
(今後の世界は AI vs 倫理 が加わるんだから)

様々な意見があるだろうけど、原爆表現の在り方に関しては、限界まで熟考された結果あの演出だったのだとおもう。
本邦でヒロシマを描いた映画として記憶に近いのは『この世界の片隅に』だが、原爆投下時の表現としては「登場人物が知り得た事象を描く」という意味で類似している。
『オッペン・ハイマー』では開発者達の日常に視点があり(伝記という体裁なのだから当然)『この世界の〜』では市井の一般人だ。
なので、悲惨さをより強調する演出があったとしてもそれは「登場人物は直接知り得ない事の表現」になった可能性が高い。
当たり前なのだけど、大衆向けの映像作品において、なんの脈絡もなく知り得ないシーンを差し込むというのはそれこそ作り手のエゴとして忌避されるべきものだとおもう。
もし「最適な観せ方」があったとしたら、この作品で為された表現と極めて近しいものだったのではと感じる。

役者さん達の演技が素晴らしい本作だけど特にケイシー・アフレックの独特の間や雰囲気が忘れられない。
もう一点、リアル志向のノーランさん、あの爆発のシーンはどうやって撮ったのだろうか。
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